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児童虐待とその後を考える

児童虐待防止

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さて!「児童虐待防止法」が施行されたのは、

なんとたった、約22年前、2000年です。

そこでは、国民全体に児童虐待を「通告する義務」が課されています。

特に資格を持った者や学校関係者、行政関係者に限ったことではなく、

「誰もに義務がある」と強く法に明記されています。

 

以下、

児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)

(最終改正:平成十九年六月一日法律第七十三号)

からの引用です。




児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、

これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは

児童相談所又は児童委員を介して

市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは

児童相談所に通告しなければならない。




※もちろん、通告者は匿名とされ、通告された者に、通告者についての個人情報を開示されることは確実にありません。

万が一漏洩があったとしたら、それこそ大事件です。これは事件の発端に関わるような問題ですから、私でしたら、漏洩したことが判明した瞬間、その事実を然るべき機関に通告します。

 

さて一方で、虐待の匿名通告という仕組みが、大人の歪んだ心理に利用されることがあります。

それは、「個人的恨み等による虚偽の匿名通告」です。

言い換えれば、大人同士の何らかの負の感情を、

匿名通告を利用して、「あの人、虐待してますよ」と、

相手の大人を攻撃する。ということです。

この場合、「虐待の可能性が全く考えられないのに、虚偽の通告をする」というケースです。

ただ、仮に蓋を開けてみれば虚偽の通告であろうと、

本当に虐待の可能性を感じたかどうかは通告者の感じ方次第ですし、通告があった時点で虚偽と判断できるわけがありません。

ですので、通告を受けた側の行政等はどうしたって、きちんと調査する必要があります。

 

実際に私も、社会福祉士としての目線からしても、

全く虐待の可能性を感じたことのないママ友が、

「偽りの」匿名通告の被害に遭った話を聞いたことがあります。

「毎日ほんの少しのお惣菜しか食べさせていない、ネグレクトだ。」みたいな通告がなされたそうですが、そのお宅の台所を見れば、家庭訪問した職員からしても一目瞭然だったことでしょう。もちろん、この方の場合はネグレクトの可能性は無しと判断され、当然、児童の一時保護にも至りませんでした。

ここで、「一時保護」という言葉が出てきました。これについては、意外と知られていない意味や意義などがあります。

そして一時保護などの児童の施設入所措置に関しては当然、通告をされたご家庭への介入や調査がしっかり行われた上でないと、できないようになっています。

ですからもし、一時保護などに至ってしまった場合、

心苦しいですが、

親御さんご自身が、子どもとの関わりを省みる必要もあるように感じます。

 

そして、「虐待した身に覚えは全くない」という親御さんも多いのですが、

(考えてみれば当然です、意識的にやっていたらそれはそれで最悪ですからね。)

調査した上で、実際に虐待等についてさらなる調査が必要と認められる場合であっても、

「児相に子どもを拉致(誘拐等)された」と親御さんが捉えてしまうことも、現実には起きています。

※以前、虐待関連の発信をした時は、「我が子は児相に誘拐されました、綺麗事を言うぐらいなら子どもを返してください!あなたの住所なんかすぐに特定できます、偽善者としてネットにも晒しますよ。」的なDMが来まして、どうしたものかと悩んだこともありましたので、一時保護に関しての現状は非常にセンシティブな事態になっているのだな、と実感したこともあります。仮に私の住所が分かったとしても、ネットに晒したところでも、どうするのですか?というところでしたので、これは脅迫に当たります、とだけご回答するに留めました。

ですが確かに、自覚はないが虐待の疑いがあるとして子どもが一時保護に至った。となれば、これは私も一人の同じ親としての立場、あくまで私「個人」の感情を移入してみれば、そのお気持ちも理解できなくはないです。

虐待したつもりなんか無いのだから、子どもが奪われた。いつ子どもとの生活が返してもらえるの?などと、強い不安を感じることだろうと想像します。

とはいえ、なのですが、

実際はやはり、一時保護についてはそれ相当の理由がないとできない措置でもある。ということは、どのご家庭の親御様も知っておく必要があるとも思います。

その理由としてご紹介すると、以下の通り法に記されています。




【児童相談所運営指針】による一時保護が必要な場合

※児童福祉法33条より引用

(1)緊急保護 

・棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合 

・虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。) 

・子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合

(2)行動観察 

適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合

(3)短期入所指導 

短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合




要するに、通告があった以上は、しっかり何が問題となっているのか調べてみないと分からない。

被通告者からのクレームが来ることは前提としてでも、

児童虐待が起こっているかもしれない僅かな可能性があるならば、子どもの安全を守るために行動しなければならない。

これが、実際のところです。

現状、児相の方々も、同時にケースによっては警察も、対応するには未だに人数は足りませんし、「ありがとう」と言われることの非常に少ない、日々、大変なお仕事です。

 

そして「匿名通告」のある理由の一つとしても大事なところなのですが、

子どもはどんな親に対しても、

「親を守りたい」

「親から愛されたい」

「親から愛されていると信じたい」

そして、「親と離れ離れになったら、自分はどうなってしまうのか」

などという気持ちを抱いている場合がほとんどです。

なので、子どもが親を告訴する。

という場合は他国のケースでも全国ニュースになるレベルになることからも、

非常に珍しいことであることが分かると思います。

ですから子ども自身から、

どんなに酷い扱いを受けても、「助けて」と声を上げることは精神的にも知識レベル、語彙力的にも、非常に困難なのが現状かと思います。

さらに、「虐待をやめたい」という親御さんの心理ケアも昨今、重点的に行われてはいます。

社会福祉法人やNPO団体などが主体として活動して下さっていますが、なかなか十分な支援が行き届いているか?と言えば、即答はできないのが現状です。

年々その相談数は増えているとはいえ、当事者(虐待をしている親)からの相談数は全体の約35%と少数です。(※社会福祉法人子どもの虐待防止センターの統計による)

そもそも、「虐待をやめたい」という相談をすることは、その罪悪感や、通告されるかもしれないという不安等から、抵抗を感じる方も多いでしょうし、

虐待してしまう大人の中には、生まれ持った何らかの特徴がある方や、知能指数がグレーゾーンの方もいらっしゃるのが現実で、自分の抱えている問題を言語化するのが困難であったり、同時に、文章や説明を理解するのも困難な方もいらっしゃることがあります。

もちろん、発達や精神、知能指数に何ら問題を持っていなくとも、どの親も虐待をしてしまう側になる可能性はあります。子育てほど答えもなく、休みもなく、日々悩みの尽きない大仕事は他に見当たりません。その上に、相談できる人や協力してくれる人がいない場合、親はものすごく追い詰められるものです。それ故、いつ、誰が虐待をする側になってもおかしくないのです。

だからこそ、そうなってしまっても、そうなりそうな時にも、第三者に相談することは非常に大切です。

ただし、相談をしてもらう側としては、相談者側の「自発性」に頼らざるを得ないことも多く、

親御さんへのケアを十分にするにはまだまだ遠い道のりがあると、親であり、そしてカウンセラーをしております私自身、日々、感じています。

 

実際に私が過去、「これは完全にネグレクトだな。」と感じさせられたご家庭のケースをワーカーとして拝見していた際、

そのご家庭の母さんは、「毎日お風呂に入ること」「セックスをすると妊娠する可能性があること」「具合が悪い時には病院に行くこと」「乳幼児を含め子どもを置いて長時間あるいは丸一日かそれ以上外出すると危険があること」などについての意味が、どうしても理解できないご様子だったことがあります。

これ以上の具体例をお話しすることはできませんが、このご家庭の場合も、

子どもたちは一様にして、「ママが好き」と言い、「困ったことは無い」と言いました。

実際、困ったことだらけだったのですが・・・。

なので週に1度、「子どもたちが生きているか」それだけでも確認するための訪問をしていたこともあります。

 

もしかすると、そのお母様ご自身もまた、親、そして社会からたった一人、放り出されてしまった被害者なのかもしれない。

私はその時そう感じましたし、支援というものの限界に途方にくれた想いになった記憶があります。

 

虐待。

これは根深く、ズバリこれ!という解決策は、ハッキリ言って無いと感じます。

 

ただ、こういう考え方がいかがでしょうか。

 

親子といえど、

何の問題もなく平穏な関係。

そんなものは皆無と言っても過言でない。

しかし、

親子、という唯一無二の関係性は時に、神格化されることがある。

これにはかなりの無理がある。

親子関係は、

〜色々あったけど、今では大切な存在。〜

そうなれたらラッキー、ぐらいなもの。

だから、

親子だからといって、

必ずしも素敵な関係になれなくても、いい。

親子って、素敵な関係「でなくてはならない」。

そういう強迫観念的な思考は取っ払っていい。

 

親子であろうと、違う人格を持った、

別の人間であり、

別の人生がある。

だから私は、私として生きていく。

私は私の人生を持っている。

それは確かなことだ。

 

多くの大人が抱える「生きづらさ」の背景には、

大なり小なり、親子関係を含む、「育成環境」が関わっています。

生きづらくたって、生きていく。

そのためには、「私の人生」の今とこれから。

それを一番に大切にしていきたいものです。




〈参考・関連リンク〉

虐待かな?と思った時の相談は→児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(24時間対応・通話料無し)

厚生労働省「児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)

子ども虐待防止 オレンジリボン運動HP

社会福祉法人子どもの虐待防止センターHP

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